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その声で
「疲れた…」
「本当ですわ…」
「ジェイド…次の街までまだか…?」

二人の王族が文句を言いながら歩いているのを横目に、ジェイドは今いる場所から次の街までの距離を脳内で計算してみる。

「まだ先ですよ」

それを聞くと王族二人がガックリと首を下げた。

「でもちょっと休憩しませんか?私も疲れましたし…」
「賛成!」

ティアの意見に真っ先に賛成したルークが手っ取り早く場所を見つけ、早速地面に寝転がっる。

「あー疲れた…」
「喉が乾きましたわ…」

そう言って鞄の中をあさるナタリアだったが、飲み物らしきものは何もないようだ。

「どうすんだよー…」
「ここに来る途中…湖がありましたねぇ」

思い出したかのようにジェイドが呟いた。
誰か汲んで来いという事だろうか。

「アニスちゃんは疲れたから無理〜」
「私だって疲れたわ…」
「大体俺どこにあったか知らねぇし」

ルークがそういうと全員がジェイドの方を見た。

「…わかりましたよ」

バケツを渡され、年寄りにはキツイですね……なんて冗談を言いながら来た道を引き返して行く。

「気をつけろよー」

後ろからガイの声が聞こえたような気がした。





「だぁぁあ、まだかよ…」

ルークが木の根本に座り込んで叫び始めた。
暇で仕方ないのだろう。

「ルーク、きっともうすぐ帰って来ますわよ」
「でも確かに遅いよな…」

ジェイドが水を汲みに行ってかれこれ1時間。
一向に戻って来る気配はない。

「魔物に襲われてたりして!」
「…まさか」

アニスの縁起でもない冗談をガイは軽く流すが、内心少し本気にしてしまい冷や汗が出てくる。

「俺、見てくる」

ガイは立ち上がりそれだけ言うと、ジェイドが向かった方向へ歩いて行った。


生い茂る草を掻き分け、ジェイドが歩いて行ったであろう道を歩いて行く。
しばらくすると、湖が見えてきた。
ああ、ここが旦那が言ってた湖か…
しかしおかしい、水を汲みに先に来ているはずのジェイドの姿が見えない。
ふと、アニスの言葉が脳内を過った。

「……まさかな」

最初はのんびりとジェイドの姿を探していたが、徐々に見つからない事に不安が募り焦りだす。

「あ…?」

湖から少し離れたところに、倒れている探し人の姿を見つけた。

「嘘…だろっ……」





「ガイも遅せぇな…」

探しに行ったは良いものの、その探しに行った人物まで帰って来ない。
余りの遅さに苛立ちが募りはじめる。

「あ、あれ…!」

アニスが立ち上がり、先程ガイが向かった方向を指差した。
振り向くと、ガイが右手にバケツを持ってジェイドを背負いこちらに歩いて来ている様子が目に写った。

「ガイ!…にジェイド……!?」

ガイが後ろに背負っている人物を見て、ルークは心底驚いたような顔をする。
あり得ない、正直言ってあり得ない。

「今は気を失ってるだけだ」

ガイは背中からジェイドをゆっくり木陰に降ろし、地面に横にした。

「熱があるみたいなんだ」
「熱……?じゃあまさか倒れてたの!?」
「……ああ」

水に濡らしたタオルをジェイドの額にのせて、ガイは何があったかをメンバーに話す。

「……って訳で今日は野宿、で良いよな?」
「良いも何も…大佐がこの状態では進めないし……」

ガイの一言に全員が承知すると、野宿の準備をし始めた。
こういう時は皆行動が早いのは何故だろうか。

「看病は……」
「俺がする」

ガイは真っ先に手を上げ、自分が看病に買って出た。





ジェイドを見つめ続けて一体何時間がたっただろう。
倒れていたのが心配で、あれからずっと横で眠るジェイドを見続けていた。


「ガイ、そろそろ休んだら…?」
「いや、大丈夫だ。」

心配するティアに相づちをうつと、再び眠るジェイドに向きなおる。
まだ、目を覚まさないだろうか。

「ジェイド…」

名前を呼んでも返事はない。
ジェイドは、少し荒い息を吐きながら静かに眠っている。
額をそっと撫でると、んっ…と小さな声が聞こえた。

「ガ…イ?」
「悪い、起こしたか」

すまん、とだけ詫びて軽いシーツをかけ直す。

「私は…?」
「倒れてたんだ」
「倒れて…?」

そういえば、とジェイドは記憶をたどっていく。
ふわりと宙に浮いたような感覚がして、そこから記憶がない。

「あんた、熱があったんだよ」

言われて初めて気付いた。
熱が、あったなんて。
ゆっくり起き上がろうとすると、無理矢理に押し倒された。

「ガイっ…」
「寝てろって」

顔は優しいが、声はどことなく怒ってるような気がした。

「ガイ……?」
「無理、するなよ」

ガイの手がゆっくりと顔へ伸びて来きて、優しく触れる。

「無理なんてしてません…」
「してるさ」

してるから倒れたんだろ、あんたの事だから熱が出たのは自分の責任だなんて言って、また無理をするに違いない。

「あんまり心配かけて欲しくないんだ…」

倒れただけで、心配。

「何故…?」
「大切だから、さ」

誰よりもな、と耳元で囁かれ、余計に体温が上がった用な気がした。

そう、大切だから心配。

「顔、こんなに熱いじゃないか」
「これは、」

熱のせい、だけじゃない。
何かを言いかけて、喉に詰まった。

「これは…?」
「っ、何でもありません…」

いつものように言い返そうとするが途端に恥ずかしくなって、言えなくなる。

「そうか」

言いかけた言葉が気になるけれど、また明日聞けばいい。
ぼんやりと考えながら大切な人の頬にキスをした。

「おやすみ」

明日、その声で答えを聞けると信じて。



end.



…なんだこれ終盤気持ち悪い文だなおい(笑)


あきゅろす。
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